大工の見習い No.9
2022.06.21
トヨちゃんの回想録
棟上げも無事完了。
町内の人々から(拍手)を頂いた後、新築建物の中に真新しいムシロが敷かれ、
朝から、ご婦人は白いエプロン姿で走り回っていた。
めったに見る事の出来ないご馳走が並べられ、手伝いの人からおだてられたり。
しかし自分はまだ半人前にもなってないのに、おだてに乗ってはいけない!!
身の引き締まる思いで口数も少なく、家に帰った。
(残りの仕事を早く完了させ、親方のもとに帰らねば…)
桜の花も満開になる春、今が盛り。
毎年恒例の八塔寺の春祭り、近所の若い人達に誘われて母が買ってくれた背広を着て遊びに行った。
生まれて初めての開放感を味わったその帰り道、にわか雨に遭い、生まれて初めて着た背広が濡れてしまった。
腫れ物に触るように陰干しにして2~3日後、手を通してびっくり!!
アーアッ!(ゴメンナサイ…スミマセン…)
背広がまるで子供服ぐらいに小さく縮み、見るも無残な姿になっていた。
母の精一杯の血のでるような気持ちを考えたら、申し訳なさで泣きたくなった。
つづく
有本建設 創設者である有本豊敏が丁稚時代を語る。