大工の見習い No.13
2022.09.14
トヨちゃんの回想録
棟上当日、組立がスムーズに出来るように、一度仮にさし合わせて見て置く作業。
僕は柱を受け持ち、親方は胴差の方の仕事。
「おい!込み栓の栓道にキリをもんでおけ!」
もたもたしていると親方は僕をにらみつけて怒る。
しかし良い勉強になる。よし頑張ろう!と自分に言い聞かせた。
一日も早や暮れようとしている。
その時お施主様の娘さんが勤めから帰って来た。
ぼくは仕事を終えて帰ろうとしていた時、その娘さんが
「有本さんお花のお稽古に行かない?」
「僕の手に合うかな~?」
「合うわよ~行こう。今晩よ!!毎週水曜日にあるの、お花は準備してあげるから今晩は手ぶらでおいでよ、雰囲気を見に来るだけでいいでしょ。」
僕は家に帰って早速親方に話した。
すると「生け花ぐらい習っていた方が良い。」
やったーと思い、早速その会場に急いだ。
流派は嶬峨未生流。女性ばかりの中、男性も一人いた。色々と楽しい会話もあり、親方の家でお爺さんお婆さんを相手にラジオの浪曲を聞いているよりは、なんぼか楽しい。
それからは水曜日が待ちどおしかった。
るんるんる~ん♪
今までよりもなんだかウキウキして仕事が楽しくなってきた。
後一週間ぐらいで棟上だそうです。僕は嬉しかった。
それは、お金にはずっと不自由だったので、三百円ぐらい礼儀が頂けるかなぁって。
つづく
有本建設 創設者である有本豊敏が丁稚時代を語る。