大工の見習い  No.14

大工の見習い No.14

2022.09.28
トヨちゃんの回想録

棟上の晩にご馳走が並べられ、お施主様からまずお礼の挨拶があり、手伝いの人にも大工にもご祝儀が出され、最後に僕も頂けた。

お金には長い間不自由だったので、嬉しくて嬉しくて…

帰る途中で開いてみると、500円が入っていた!ありがとうございます。

このお金は大事にしまっておこう。また、明日から頑張ろう!

真夏の太陽は照りつける。

今日から屋根の上に上がって板に釘を打つ作業。

僕はまだ子供なので2階の屋根にはあがらせてくれない。

数日屋根の上ばっかり、僕はうっかりよそ見をしていると屋根の上から

「こらっ!!」

???

声の方に目をやると、2階の屋根から僕をにらみつけていた。

「親方、すみません!!」

僕は釘を打ちかけると、

「おいっ!お前の後ろの梁の根元が屋根垂木より少し高いじゃろう。手斧(チョウナ)を持って上がって、はつっておきなさい。」

僕は梯子を下りて手斧(チョウナ)をもって上がり、削り取った。

夕方仕事が終わって下に降りるとき、何気なく、手斧(チョウナ)を肩にかけ貫きをつたって降りて行った。

後60cmぐらいの所から下に飛んだ。

その弾みに手斧(チョウナ)が肩から外れ落ちた。

刃先が僕の足の内首に当り、3cmぐらい切れた。

大きく口を開けている。

『困った…』

僕はすぐに自転車に乗って近くの診療所に行った。

                              つづく

トヨちゃんの回想録『大工の見習い』

有本建設 創設者である有本豊敏が丁稚時代を語る。