#28 エンドユーザーの声
先日備前市で子育て支援をされている施設の代表さんと話す機会がありました。
数年前からのお付き合いで、お庭で子どもたちが遊べるキッチン小屋をつくったり、あたらしく施設をつくるにあたって、子育て施設をイメージした塀をつくらせて頂いたり、木工イベントもさせてもらっている間柄です。
なかなか忙しくて足を運べていなかったのですが、会社から近いこともありひょろっと寄ってみると代表さんとお会いすることができました。
最近はどうですかぁ?なんて世間話をしながら話していくと代表さんから、来られるお母さんお父さんから、『備前市に住みたいのだけどなかなか程よい広さの物件がなくて結局岡山市内の方へ物件を求めて離れざる負えないので困っている』という声をよく聞くんです。なんてことを言われました。
備前市は人口3万人程度で人口減少も著しい地域で、新築着工棟数も年間数十件でいわゆる過疎化が進行している地域にあたります。
データをみるとこのように住む人が減っているということが読み取れるのですが、実際は住みたいと考えているけど住むところがないという問題を抱えているのかもしれないという仮説が考えられます。
有本建設では賃貸住宅をメイン事業にしている訳ではありません。
備前市にある賃貸住宅は地元の工務店や不動産屋が建てたものから、全国展開のメーカーが建てたものがほとんどです。
当然市場調査をしたうえで、間取りや家賃設定をして、利回りを考慮してご提案しているのだと思いますが、実際は地域のニーズとはズレているということは往々にしてあるのかもしれません。
この地域の賃貸住宅は2DKなどのファミリー層向けが多いようです。しかしもう少し広い2LDKや3LDKなど一戸建て住宅を新築するまでの間に住まう賃貸住宅としては少し狭い物件が多く、ここに住みたい人とはニーズがズレているようです。
たしかに利回りを考えると広い間取りをつくると部屋数が減り、少しでもコンパクトにしてより戸数の多い賃貸住宅をつくることで利回りを上げることはオーナーさんの立場に立てば正しい提案だと思います。また広い間取りになると賃料も上がることになり、賃料相場で市場負けしてしまうことも考えられます。これは難しい問題ではあることは重々承知していますが、エンドユーザーとのニーズのギャップを埋めない限り、空室問題などを考えると逆に経営は安定しないという可能性もあります。
備前市は子育て支援も比較的充実してますし、子育て支援を目的にした支援団体さんも多く活動しています。自然もあるので子育てには向いているのではないでしょうか。そんな『まち』の人たちの声を都市や建築が追い付いていないことを考えるとアンケートや数字では見えないエンドユーザーの声に耳をかたむけて、ハード面で『まち』を創造していく必要があることを考えさせられました。
また、先週末行われた『備前焼まつり』では有本建設も参加させて頂きました。
ちょうど有本建設の運営するライフスタイルホテル『備前ホテル陶』の1周年もありマルシェを開催し、イベントを行い、ホテルの内覧会なども併せて行いました。
地元の方や遠方からの方も来てくださり、多くの方と直にお話することができました。
地元の方でも、近くにホテルが出来ていたのは知っているけど中はどうなっているのかは知らなかった。地元の方が、親戚などが遠方から来られた際に泊まっていただくこともあるんですよ。などと話すと確かに家に泊めるには掃除をしたり大変だから便利かもという声が返ってきました。
そもそも地元の方であってもホテルの存在自体を知らないことも分かり、自分たちが思っている以上に認知されていないのかもしれません。
地元の方にもチラシを配ったりしてまずは認知してもらい、こういう使い方をしてもらったら便利ですよということをもっともっと知ってもらうことが、今後の運営には求められるように思います。
人口推移や新築着工棟数などの行政の発表するデータやSNSやブログなどによるデータ分析は当然必要なことですが、地方の小さな工務店が生き残っていくためにはやはりエンドユーザーのリアルな声を大切にすることから、運営のヒントが生まれることがあるように感じました。
これは全国展開の大手企業には難しい地元工務店ならではの利点です。
都会では人口も多く、どちらかというと万人ウケする一般解を求められがちですが、地方においては人口は少ない分、特殊解を見つけることは比較的可能なように思います。
これは地方で工務店を営むうえで大きなアドバンテージになることは間違いありません。
今後もエンドユーザーの声に耳をかたむけながら『まち』に必要とされる工務店を目指していきたいと思います。
ではまた。