大工の見習い No.1
2022.03.01
トヨちゃんの回想録
昭和27年5月 住み込みで大工見習いに行った。
中学校を卒業して15才。
一人で自転車のボロに風呂敷包み1ヶ。
(中身は学生服の まあまあ よさげなよそ行き)が一着・・・
母親が見送ってくれた。
つらくてつらくて、涙が止まらなかった。
でも覚悟を決め、手を振りながら、泣きながら別れた。
「元気でなー!風邪ひくなよー!!」
と、母親の大きな叫び声。
(一人前になって帰ってくるぞ!)と思いながら・・・
だんだん親方の家が近付くにつれて、心細くなってきた。
親方夫婦、老夫婦、子供二人の六人家族。
子供達はもう成人でした。
「きょ、今日からお世話になります。どうか宜しくお願いします!!」
と、おどおど、、、
「とよちゃん、あなたは私達の部屋で一緒に寝ましょう。」
と、おばあさんが言った。
「荷物はここにね。」
と、押入れの隅が与えられた。
僕が風呂敷包み1ヶを入れた。
「その中には何が入っているの?」
「学生服一枚、下着、靴下、タオルです。」
「日常使う物は何もないの?」
「・・・僕は何もありません。」
「下着なんか洗濯する時は、どうするの?」
「裸の上に今着ている服を着るだけです。」
つづく
有本建設 創設者である有本豊敏が丁稚時代を語る。