大工の見習い No.11
2022.08.17
トヨちゃんの回想録
「ただ今帰りました!」そう言って親方にお酒一升を差し出した。
「何なら?これは。」
「はい、手伝いに来られた人が『違ったところがない建前が出来たら酒一升お前にやる』と。それで頂きました。」
ホーっと親方は言った。
「ところで土台を据えるとき水平はどうして出した?」
「はい、丸い竹を2間ぐらいに切って、中の節を抜いて水を入れてやりました。」
「誰に聞いたんなら?」
「誰にも聞きません! 親方がしていたのを見ていました。」
「そうか、まぁー良くやった。でもまだお前は半人前にもなってないぞ。これから 頑張ってやらないと一人前にはなれんで!」
また、今晩から気兼ねをしながらの毎日が続く。
しかし今日は、親方にも少しは褒めてもらえたのでよく眠れた。
「おはようございます。行って来ます。」
弁当を持って作業場へ…
つづく
有本建設 創設者である有本豊敏が丁稚時代を語る。