大工の見習い No.21
2023.01.04
トヨちゃんの回想録
押入れの壁板を削って押入れを仕上げたある日、
オイ、天井竿を削れ。猿ほう面を取ってな。それが済んだら天井板を削れ。その板は秋田杉じゃ!値段が高い品なので気をつけろ!!カンナの刃をよく研いで、カミソリより良く切れるぐらいでないとダメだよ。板に、しゃくりを入れてイナゴを切って、へらを造っておきなさい。」
板が思うように削れず、一日中叱られ通し。
仕事の方はうまくいかないし、親方には一日中叱られっぱなし。もう頭にきた。
今日は仕事から帰るとき橋の所で待ち伏せして突き落としてやろうかと腹を決めていた。
僕の気持ちが分かったのか、親方が側に来て「しまわんか。」
僕は黙っていた。
すると親方がこう言った。
「わしはお前のお父さんから大事な子供を預かっているからな~。一日でも早く一人前にしてやろうと思ってな。頑張れよ!!」
泣けた・・・その時僕はなんという愚かな人間だろう。
僕は大きな声で、「すみません頑張ります!!」と同時に、心の中で親方に手を合わせた。
でもあの一言が無かったら、僕の人生は変わってしまっていた。
神様は僕を見捨ててはいなかった。そうだ僕が頑張るよりも他に道がないのだ。
行く日も行く日も一生懸命励んだ。
つづく
有本建設 創設者である有本豊敏が丁稚時代を語る。