大工の見習い No.26
2023.03.15
トヨちゃんの回想録
そうこうしている内に正月が近くなってきた。
楽しいはずなのに何だか寂しい。
それはなんと言ってもお金がないから。
給料が貰えるわけもないし、小遣い銭もくれる人もないし、年がら年中金欠病にかかりきり。
僕の服のポケットには20円あっただけ。
正月が来て大阪から親方の弟さんが一家で帰ってこられた。
今日は元旦。
「トヨ、若い者が家におらず遊びにでも行け。親切ではなく邪魔になるから…。」
と、おかみさんに言われたので
「僕も今日は力一杯、遊んで来ます。」
とは言ったものの、たった20円でどうすることもできない!
パチンコ屋に入って20円出すと、若い女性の店員さんが僕の顔を見て笑いながら玉を10個くれた。
でもアッと言う間も無く終わった。
夕方になって楽しかったような顔をして親方の家に帰ったが、こんなに長い1日は初めてだ。
今年は良い年になるかな〜??
いいや、一人前にならない限り良い年になるはずがない…。
つづく
有本建設 創設者である有本豊敏が丁稚時代を語る。