大工の見習い No.5
2022.04.26
トヨちゃんの回想録
町内手伝いの皆様に「それでは宜しくお願いします。」
と言って、建方に取りかかった。
現代とは違い安全に対する意識も低く、《ハチマキ》をしての作業。
ワッショイ ワッショイ…
の掛け声で、やっとの思いで棟まで進んでいった。
私の心中は、大きな声で叫びたいぐらい嬉しかった。
もしかすると、パーフェクトかも!?と思った、その時だった。
「トヨちゃん!!」と叫ぶ声…
「ハイ!」
「この梁の背に墨はついているが、穴を掘るのが残っているで!」
下の方で「あーあ、トヨちゃん。一升はパーになったなー。」
だがそれだけであとは何事もなく、無事に上棟ができ
町内の人々から
「中学校を卒業してまだ16才なのに町内の大人を使うようになった」
「やっぱり弟子入りをして修業すれば…」
「よくやった!!」と、拍手をされた。
つづく
有本建設 創設者である有本豊敏が丁稚時代を語る。