#12 潜在ニーズを察知する
ある増築のお話
事前に聞いていたのは
『今住んでいる家に子どもの為の個室をつくりたいので増築をしたいからガレージをつくってその2階を子ども部屋にして欲しい』
というものでした。
実際に訪れてみると立派な木造2階建ての住宅が建っていました。
内部も木の香りがしてとても素敵なおうちでした。
そして実際にお客様に今回のご依頼の趣旨を色々と伺ってみると
増築をしたい目的は『年頃のお子さん為に個室を設けてあげたい』ということでした
そして『その為に増築しようとすると駐車場の部分がなくなってしまうのでビルトインガレージにしてその2階に個室をつくるしかないんじゃないか』ということでした。
ここで一度話を整理してみると
目的は個室をつくることでガレージはその手段であって絶対条件ではないということです。
話しをしてみるとやはりガレージは必ずも求めていないというのがお客様の考えでした。
その場では、どのようなプランを提案するかはお話しませんでしたが、そのときに私は既にガレージをつくらずに個室だけを増築することはできないか模索していました。
すると敷地の東側に3mほどのスペースが残っていました。
細長いスペースですがうまく活用すれば個室の増築だけでいけるのではないだろうかと思いました。
そして会社に戻りプランを考えてみるとここに増築をしようとするとプランは入ったとしても屋根の軒が当たってしまう為なかなか高さが入らないことに気が付きました。
そこで考えたのが増築部の床のレベルを既存の住宅よりも下げて、全体的に半階ずらしたような構成であれば軒下にうまく増築できるのではという案です。
半階ずれているということはスキップフロアのような形になりますが、子ども達の個室であればそれも面白いのではないかと思しましたし、半階ズレていることで隣の部屋とのプライバシーも確保できそうだと考えました。
そして考えたプランと模型を持ってお客様にプレゼンをしてみると、ガレージをつくらなくても増築ができるなんて考えていなかったので良いですね。とのお返事を頂きました。
しかもスキップフロアの構成も面白そうということで話を進めることになりました。
実際には色々な業者さんにも相談していたそうでプランを見ていたそうですがどれもガレージを設けた増築だったそうです。
またこの増築では既存の窓を増築部との接合部分にあてている為、既存部分を再度構造計算をしたりすることはありませんでした。
ここにもちょっとした思いがあって既存の建物が、とても丁寧につくられたものだったのでそこにはちゃんと敬意を表したいと思いなるべく既存の建物を変更しないことを当初から目標にしていました。
既存の部分と増築部分は構造的にはしっかり切り離されておりそれぞれ法律を遵守した上で成り立っています。
既存の建物にそっと隣に新しい離れを添えたというイメージです。
出来上がってみると子どもたちが階段を遊び場のごとく駆け回っていました。スケルトンの階段からチラッと子どもが通るのがリビングが見えたりして離れていても気配は感じられるのも良かったように思います。
今回のケースではお客様の『潜在ニーズは何なのか?』とうことを整理してあげることが大事ということを学びました。
設計士は単なる御用聞きではあってはならない
お客様の要望の本質は何なのかを見極めて時には、お客様が想像していなかった形で提案する勇気も求められることもあるのではないでしょうか
結果的にお客様の為になって、そこで住まう暮らしが豊かになってくれるのが我々が建築を建てる意義でもあります。
わくわくするような建築を今後も提案できるように、色々なところにアンテナを張ってアイデアの引き出しを一杯にできるよう努力しなくてはと思います!!
ではまた