#18 木造の可能性
都会の住宅群を眺めていると木造なのにほとんど木が見えないという現象に気づくことができます。
これはハウスメーカーが悪いわけでもなく勿論工務店が悪いわけではありません。
これはもう法律のせいといっていい。
都心部では準防火地域と呼ばれる火事の際に火災を広げない、もらわないという理論の元、外壁を耐火性能をもつ建材でしかくるむことができない法律になっています。最近では仕上材の下地の処理で外壁に木を用いることも可能になってきてはいるが費用面やメンテナンス、これまでのイメージもあって外壁になかなか木が現れてこない状況になってしまいました。また準防火地域では軒裏にも木を使ってはいけませんよという法律がある為これまた木を使用しにくい環境となっています。
都心部に限らず地方都市であっても、法律によって外壁に関しては規制されているところが多いため、田園風景が広がるポツンと一軒家であっても外壁に木を使うことができないといったことはよくある話です。
ちょっとコムズカシイ話をさせてもらうと、この法律には古い歴史があって大正8年に内田祥三氏という火事に詳しい建築家が決めた防火に関する法律(市街建築物法)によるものから始まっています。これにより都市の建築の外壁と軒裏はモルタルで包むことによって火事を減らす法律が生まれました。
また、日本においては大正23年に関東大震災、そして太平洋戦争と2度も都市が焼け野原になってしまった経験をしています。
戦後、公共建築物のほとんどがコンクリート造によって建てられることになります。
要はもう焼け野原になるのにコリゴリだったのだと思います。
しかも空襲を体験している人々からすれば木造の家が焼けていく様子が頭の中にこびりついている為尚更コンクリートの頑丈な建築に力を入れたのだと思います。
のちに出来上がった都市を見た内田祥三氏は『間違ったかなぁ』と言っていたという記録がありますが、もう遅い(汗)
近年では木造による高層ビルや、学校などがつくられるようになりました。
これには木材の耐火性能の開発の進歩や、構造材としてより大きな建築にも対応できるシステムの開発などが進んだ為です。
最近では木造の屋根でできた公共美術館が老朽化したとのことで、建築家がたたかれるニュースがちょっとした話題になっていますが、木は当然老朽化します。もちろん、コンクリートも老朽化します。
いくら技術が発達しようとも建築は人がつくるものである以上その建物が続く限り手をかけてあげなければいけません。それは人と一緒です。
逆にちゃんと手をかけてメンテナンスをして上手に住まうことが出来れば100年くらいは維持できる建築は可能なのではないでしょうか。
今後技術革新は継続して進んでいくはずです。
木造の可能性はどんどん広がっていくと思われます。
しかし、技術の開発だけでなくその建築を活かしていくのは人次第なのは間違いありません。
有本建設では『木』を大切にしています。
今後も『木』の魅力を発信できるような建築をつくっていきたいと思います。
ではまた