#26 建築の理想と現実

#26 建築の理想と現実

2024.10.21
有本の取り組み

デジタル社会を生きる現代において、建築とはどのように思われているのか考えてみました。

現代は様々なデジタルコンテンツが発達してインターネットが普及する以前とはまるで違った価値観を私たちは生きています。
生成AIの普及により簡単に文章がつくれたり、絵が苦手な人でもAIによって頭の中に描いている画像や動画を簡単につくり出すことができます。

AIのつくるものには隙がなく(まだまだ人のチェックが必要とは言われていますが)、完璧なものが作り出されます。
Apple Vision Proを使えば仮想空間上で現実世界では行くことが難しいところでの体験がリアルに感じることができます。
またゲームにおいても、画質はよりリアルになり、あたかもそのゲームの世界が現実に起きているような感覚を体験できます。

建築の業界においてもイメージパース(CG)は本物と区別がつかないくらいリアルになり、ゴーグルをはめてこれから建つ建築をあたかもその場にいるように歩き回ることができたりするツールも普及してきています。

そのような現代社会にいると、こと建築においてあたかも完璧な世界が完璧に出来上がって当たり前のように思われがちです。

しかし、実際にものづくりの現場のど真ん中で仕事をしていると、表向きは完璧にできているようで、実際は人がひとつひとつ作り上げているものであることには今も昔も変わりない現実とのギャップを感じます。

確かに昔に比べれば、鉛筆で図面を書いていたものがパソコン上で図面を書くようになりより精度の高い図面が書けるようになったり、20年くらい前までは木を一本一本大工さんが刻んでいたものが、工場で機械が加工することになり、精度は格段に向上しました。

しかし、今のところをそれを組み立てるのは大工さんあり、多くの職人さんが現場で調整をしながら作り上げているのがリアルな現状です。

ですので当然現場で図面との整合性が取れていないことや、図面と違った建材が納品されることも正直に言うとあります。
その都度現場で指示をしながら是正をし、ときにはやり直しを指示することもあります。
また図面では分からなかった納まりの悪いところなどは現場の職人さんと知恵を出し合いながら工夫を凝らして作り上げていきます。

工事が始まる前に私はこのことをお施主様にお伝えするようにしています。
当然ミスはないように最善をつくすことはお約束します。
しかし、人がつくるものである以上ミスが絶対に発生しないとは言い切れません。
実際に小さなミスはどの現場でも必ず起きています。

このような家づくりの現状を知ってもらった上で、なにか問題が生じた場合には必ずお施主様に正直にお伝えすることをお約束しています。

建築は出来上がってしまえば壁で塞がれて基礎も躯体も見えなくなってしまいます。
ほとんどの方が建設業には詳しくない方ばかりです。そもそも問題が生じているかも分からないはずです。
でも問題が生じたことは必ず正直にお伝えします。
そして問題を解決するための最善の方法をご提案します。
これが法律に抵触する問題であったり、明らかにどうしようもない場合はやり直しをしたり、工期の遅れに繋がる場合は補償もさせて頂きます。

とにかくお施主様に『嘘をつかないこと』『隠し事をしないこと』を徹底しています。


これは私が今まで数多くの現場に携わってきて最も大切なことだと思っています。
ミスのない現場などほぼありません。これが事実です。

このミスに対してどれだけ真摯に目を背けずに向き合えるかが家づくりにおいてはとても大切なことです。

『家づくりは一生に一回の最高の買い物です』とよく言われます。
実際につくられる建築はバーチャル世界のものと違って間違っていたら後から修正できるものではありません。なのでミスとは常に隣り合わせにいることを我々は意識して、それと真正面から向き合い誠実な仕事をすることが大切だと考えています。


今回は建築の理想と現実というお話をさせて頂きました。
建築は人が作っているものです。
どんなに機械が発達して、プレハブ工法などで工場でつくってくるものであろうと人が介在している以上絶対にミスが生じないとは言い切れません。

そのような事態が発生した場合の対応はハウスメーカーにしろ工務店にしろ、どの業者さんに依頼するかの判断基準になるのではないでしょうか。

『ミスは絶対にありません』と言い切る営業マンをあなたは信頼できますか?


ではまた