#2 あるものを活かしてないものをつくる

#2 あるものを活かしてないものをつくる

2024.09.18
有本の取り組み

岡山県の空き家数は、2023年10月1日時点で約15万7000戸で、5年前と比べて約1万4000戸増加しています。総住宅数に占める空き家の割合は16.4%で、中国地方では最も高くなっています。

我々が活動の拠点としている岡山県の東部(東備地区)も御多分に漏れず空き家問題は深刻です。

新築着工棟数が減少傾向にある中、既にある建物をリフォームやリノベーションをして再利用する市場は活発化しつつある流れを肌で感じています。

2025年4月から建築基準法の改正があり、既存建物の改修に際しても一定の内容になると確認申請や構造計算の提出など、今までのように簡単には手を付けられなくなるという問題もありますが、こちらはまた別の機会にお話しさせてもらいたいと思います。

リフォームと言っても規模は様々で、内装を補修したり、使いにくい水回りなどを新しいものへ変更するものから、耐震や性能を根本から見直して老朽化している部分を全てやり替えるフルリノベーションまで幅は広いです

今日ご紹介するのは、内装の補修や水回りのやり替えをしながら、新しい暮らし方を提案した事例です
ご依頼の内容は住まい手のいなくなった木造の住宅を一部リフォームをして住み替えたいというもの
建物自体は古いものの内部の木材はしっかりとしたものが使われており立派な装飾もあり当時の大工さんの腕の良さを感じさせる建物でした
しかし水回りや建具、畳など改修が必要な部分もありまずはそれらをやり替えることなりました

はじめて物件をみた際に感じたことは、リビングとダイニングに対する違和感です。
大工さんの優れた仕事が際立つ建物にも関わらず、リビングとダイニングはクロスが貼られたいわゆる普通の空間であったこと
天井もクロスの貼られた平らな天井で古き良き木造建築の良さを感じられませんでした。
天井裏を覗いてみると立派な丸太の梁が影を潜めるように居座っていました。

天井裏を覗いてみると立派な丸太の梁が影を潜めるように居座っていました。


これは活かさない手はないと、思い切って天井をはがして立派な丸太を永い眠りから覚ましてあげて、リビングとダイニングが隔てていた壁も取っ払ってしまい大きなリビングダイニング空間とすること提案しました。
壁や天井を取り払う際は構造面にも十分に留意しつつ必要とあらば補強するようにします

実際に工事を進めてみると大きな損傷もなく多少の構造補強のみで予定通りの内容で進めることができました。
そして出来上がった空間に入ってまず感じたことは『自然の風が気持ちいいなぁ』ということでした
リビングとダイニングを隔てていた壁を取っ払ったことで南北で風が抜けるようになったのです
そして思い切って天井を現しにしたことで空間を広く感じることができました


今まで日の目を浴びることのなかった天井裏の梁も息を吹き返したかのように生き生きとしています
今回大きく手を加えたのはリビングダイニングですが、この空間を変えるだけでも現代の住まい方にあった暮らし方をご提案できることを再確認できました。

リフォームやリノベーションでは元々ある建物を活かしながら計画することが必要ですし、それが新築にはない醍醐味と言えます
今回ご紹介したリフォームの事例では既存の梁を活かしながら現代の暮らしにあった形にバージョンアップすることを試みましたが、そこには既にあったものを生かすことが一番のポイントでした

今回は『あるものを生かしてないものをつくる』というテーマでお話させてもらいました

ではまた